香りの落とし穴

わたしが大好きな人参のグラッセ。本文とはまったく関係はありません。

確かに奴はそう言い放った。「あの角を曲がった先からただよう香は、女子寮の浴場のしゃんぷーの香りだ」と。

娯楽室で好き勝手していた我々くそ男子は全員が一気に動きを止め、言い放った彼へ一斉に振り向いた。

「からんからんころ~ん。きゃはは、あはは、ね~せっけんとってえ~、くねくね」お花畑から聞こえたくねくねは、若くてぴっちぴちな入浴を戯れる乙女の声だったと。「はあ~、ええ香りやった~」その鼻撃者は、思い返しながらほほを赤らめ、恍惚な表情で寮母の垂れた尻を見ながら言った。思わず1人が彼の視線の先で手をぱたぱたと動かした。彼の恍惚さに寮母の尻越しの我々もぱおーんをぴろーんとさせ、明日はあの角を曲がってやる。全員がそう決意を表明した。

次の日の寮への帰り道、あの角が近づく毎にみんなの上ずりは確かな擬音となった。「ごくり」そしてその角を曲がると史実通りそれはそれはお花畑を走り回りたくなるような優美な香りがした。その優美な香りは我々全員の鼻腔に優しく語りかけた。感極まった我々くそ男子全員それぞれが好き勝手にそのくねくねを想像させ、ぱおーんをぴろぴろーんとさせながら我が寮への帰路を歩いた。

我々の寮は玄関へ行くためには風呂場の前を通るわけなのだが、そこで全員が一気に地獄の底へと叩き落とされることになった。

くそ男子全員の鼻腔をフレグランスした香りは、あの美麗なくねくねが戯れる女子寮浴場の窓の下と全くの同じ香りだったのだ。

いくら汚れたくそ男子だろうと同じシャンプーを使えば同じ香りになるというこの当たり前の現実に、到底納得のいかない我々は、これ以上ないくらい肩を落とし、つぎつぎと頭の中の戯れるくねくね乙女を、くそ男子の姿に塗り替えていくしかなかった…。

現実に追いつかない我々男子勢揃いのちっさい脳みそはそのまま夜明けまで揺れ続けた。

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